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主な治療内容

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は免疫異常によって引き起る慢性炎症性疾患であり、難病指定となっています。治療の理論は直接的に炎症をおさえるか、何らかの方法で免疫をおさえるかの2つに大別されます。治療の第1選択は直接的に炎症をおさえるアミノサリチル酸(5-ASA)製剤で、この内服を行って頂くことが第1選択となります。ペンタサ、アサコールそして新規5-ASA製剤のリアルダも対応可能です。また、肛門に近い遠位大腸/直腸に炎症が限局した患者さんに対しては5-ASAの坐剤や注腸製剤を使用します。クローン病の患者さんではエレンタールによる栄養療法を併用します。ご希望によっては潰瘍性大腸炎の患者さんでもクローン病の患者さんでも栄養指導を行います。

5-ASA製剤で症状が改善しない場合は通常ならばステロイドを使用しますがステロイドは種々の副作用があり急に中止すると症状が再燃してしまうために緩徐な用量の漸減を要しますが、漸減している間に約半数程度の患者さんではステロイドを減らすと症状が再燃するステロイド依存性が表れてしまいます。その病態に陥ると炎症性腸疾患による症状が改善しないばかりか種々のステロイドの副作用とも患者さんが付き合わなくてはならない悪循環に至ってしまします。また、どのような患者さんがステロイド依存に陥るか否かを区別する方法はないため、当センターではステロイドを炎症性腸疾患の患者さんへ極力使用しない方針を取っています。

ステロイドの代替として、当センターでは血球成分除去療法を積極的に行っています。活動期の炎症性腸疾患の1800ml 脱血させて頂きカラムの中で炎症性サイトカインを放出している白血球を約30%吸着し返血する1回約1時間程度の治療法です。この治療の際に使用する薬剤は脱血する際に血液を凝固させないために使用する抗凝固剤のみで、白血球を吸着しても約1時間で骨髄より炎症性サイトカインを放出しない新たな白血球が放出されるため、血球成分除去療法は炎症性腸疾患に対する免疫制御療法のなかで最も副作用の少ないことが知られています。血球成分除去療法には顆粒球単球吸着療法(GMA)と白血球除去療法(LCAP)の2つがありますが、いずれでも施行可能です。血球成分除去療法をできれば週2回、患者さんの通院が困難であった場合は週1回で行うこともあり合計10回が1コースとなっており、患者さん側からみると治療終了が存在する免疫制御療法です。当センターの治療成績ですがステロイドを投与していない潰瘍性大腸炎や内視鏡的に軽微なクローン病であれば寛解導入率はGMAで約75%と報告しています。重篤なクローン病であると1コースの血球成分除去療法のみでは完全に寛解することは難しいですが、改善する反応が認められた患者さんであった場合は血球成分除去療法を繰り返すことにより完全に寛解できる可能性がGMAで50%であることも報告しています。さらに通常の血球成分除去療法であると脱血路と変血路のため両腕の血管の穿刺が必要となりますが、当方の血球成分除去療法は脱血路/変血路ともに片腕の1つの血管の穿刺のみ(single needle法)で潰瘍性大腸炎でもクローン病でも施行可能です。

血球成分除去療法を施行することになった場合は、外来患者さんである場合は医誠会病院近隣の患者さんであれば当院となりの医誠会付属クリニックで、通院がご不便な場合は北区の大阪梅田医誠会透析クリニック、淀川区の十三医誠会クリニック、新大阪医誠会クリニック、城東区の城東医誠会クリニックの透析クリニックへ依頼することになります。医誠会グループ間の施設をまたいでの治療になりますが、血球成分除去療法は前述の通り1-2か月間、1-2回/週の治療になりますので、できるだけ患者さんに近隣の施設の方が負担が少ないと考えており、さらに透析クリニックであると夜間の血球成分除去療法の施行が可能になりますので、お忙しい患者さんのメリットにもなり得ると考えています。また、すべての医誠会グループの透析クリニックでsingle-needle法での血球成分除去療法の施行が可能です。

血球成分除去療法や5-ASA製剤を駆使しても改善しなければ、潰瘍性大腸炎では移植の際に使用する免疫抑制剤であるタクロリムスも使用可能です。この薬は効果を出すためにも副作用対策としても血中濃度の調整が肝要ですが、当院では即日のタクロリムスの測定が可能です。クローン病であれば病勢に応じてヒュミラやレミケードなどの生物学的製剤による治療も対応可能です。ヒュミラのような自己注射タイプならばスタッフによる指導を行います。レミケードのような点滴タイプならば専用ベッドでの投与を行います。生物学的製剤に関しては潰瘍性大腸炎に関しても病勢に応じて使用しています。ステロイドも病勢に応じて使用致します。潰瘍性大腸炎、クローン病ともに病状によっては手術が必要になる疾患ですが、手術は消化器外科で対応可能です。

炎症性腸疾患の活動期治療によって改善頂き、維持治療の際は毎回採血を行い5-ASAを中心とした投薬を行います。再燃を繰り返す患者さんや活動期に重症であった患者さんは病勢に応じてアザチオプリンや6メルカプトプリンの免疫調節剤内服による維持を行います。開始する際は少量から開始し、採血を行いながら患者さんに応じた最適量を決定します。免疫調節剤は活動期の際から併用をお勧めさせて頂く場合もあります。ご希望なさらない場合は可能な限り併用せずに他治療を駆使致します。

炎症性腸疾患の病勢把握は採血と同じくらい内視鏡検査が肝要です。その際は鎮静剤と鎮痛剤を駆使して苦痛の少ない内視鏡を心掛けていますので、ご安心下さい。再燃が疑わしい場合は早期の内視鏡の施行も可能です。また再燃が疑わしい場合は予約外の診察も承りますので、ご安心下さい。

胆・膵疾患

急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、胆嚢結石・胆嚢炎、総胆管結石・胆管炎、胆嚢癌、胆管癌

急性膵炎は、重症化すると壊死性膵炎や臓器不全を伴い、重篤となるため救命救急科や透析科、消化器外科と連携を取りながら治療を進めます。また、急性膵炎の原因として胆管結石によるものがあり、この場合は速やかな胆管結石の除去が必要です。当センターでは毎日ERCPを行うことのできる体制をとっており、近年その件数は増加しています。慢性膵炎に対しては内科治療が中心となりますが、痛みの原因が膵管の狭窄の場合は膵管ステント留置を行い、膵石による場合は内視鏡を用いて膵石を除去したり、体外衝撃波による膵石粉砕術(ESWL)を行うことも可能です。

胆石による胆嚢炎(胆石発作)は内科的治療と並行して胆嚢摘出術を検討します。重症な急性胆嚢炎は緊急手術や内視鏡的もしくは経皮的ドレナージが必要であり消化器外科と連携し治療を進めます。大部分は内科的治療で速やかに改善しますが、再発予防のため消化器外科にて待機的な胆嚢摘出術をお勧めしております。

総胆管結石は胆管炎を起こすことがあり、胆管炎になると血液中に細菌が入る敗血症を合併することが多く、速やかな治療が必要です。内視鏡(ERCP)を用いて、乳頭部(胆管の十二指腸開口部)をナイフで切開もしくはバルーンで拡張し、胆管結石を取り除く治療を行います。

膵がん、胆管がん、胆嚢がんは難治性といわれており、腹部超音波検査や造影CT検査、MRI検査を用いて正確な診断を行っています。また、超音波内視鏡検査を組み合わせることによって、早期発見・早期診断に努めています。必要な場合は超音波内視鏡下に病変の組織を採取(EUS-FNA)し、確定診断を行います。外科治療や術前・術後の化学療法、放射線療法も積極的に行っており、消化器外科、放射線治療科と連携し、術前から術後まで集学的治療を行っています。胆道狭窄に起因する黄疸や胆管炎に対してはERCPを用いて(または経皮的に)ステントを留置しています。

食道疾患

逆流性食道炎(胃食道逆流症;GERD)、食道癌、食道静脈瘤

昨今の生活習慣病の増加に伴って、胃食道逆流症(GERD)が増加しております。胃食道逆流症の患者さんの中には逆流性食道炎やバレット食道といった粘膜の異常を来たしている方もいらっしゃいます。胸やけ、胃液がこみ上げてくる感じなどの症状をお持ちの方はご相談下さい。

早期の食道癌は条件を満たせば内視鏡治療が可能な時代となりました。当センターの内視鏡システムはNBI(Narrow Band Imaging;狭帯域光観察)を搭載しており通常観察だけではわかりにくい早期癌が見つけやすくなりました。さらに拡大内視鏡(ズーム機能を搭載したスコープ)、色素内視鏡(染色をすることで癌の部分とそうでない部分を色分けします)、超音波内視鏡(腫瘍の深さを診断します)を用いて正確な診断を行います。治療は内視鏡治療が可能なものでは内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行います。内視鏡治療では根治ができないものに対しては消化器外科、放射線治療科と連携し、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。通過障害に対しての姑息的治療としては内視鏡、レントゲンを用いてステントの挿入を行っております。

食道静脈瘤は肝硬変の合併症の一つであり、内視鏡検査による定期的な経過観察と適切な治療が必要です。静脈瘤破裂の予防として内視鏡的硬化療法(EIS)、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行っております。

胃・十二指腸疾患

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性出血性胃炎、胃ポリープ、胃腺腫、胃癌、胃粘膜下腫瘍、ヘリコバクター・ピロリ感染症、慢性胃炎、機能性ディスペプシア、胃アニサキス症

消化管出血(胃、十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂など)に対しては緊急内視鏡検査・治療を行える体制を整えております。止血クリップ、エタノール注入、HSE注入、アルゴンプラズマレーザー焼灼止血、高周波出力装置と止血鉗子による焼灼止血など様々な治療手技に精通しております。近年抗血小板薬、抗凝固薬を服用されておられる高齢者の方の消化管出血は増加しており緊急内視鏡の件数も増加しております。穿孔例など手術が必要な症例に対しては、消化器外科や救命救急科と連携し治療にあたっております。

胃ポリープ、胃腺腫、胃癌などの腫瘍性病変については的確な内視鏡診断と生検による病理診断を基本とし治療方針を決定していきます。通常観察に加え色素内視鏡や拡大内視鏡を行い良性悪性の鑑別を類推し生検による病理診断で確定します。胃腺腫、早期胃癌であれば内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)にて治療を行います。治療を行った病変のほとんどは内視鏡治療のみで治癒切除と判断されています。進行癌に対してはPET-CTを用いて正確な病期診断を行い、消化器外科、放射線治療科と連携し、手術療法、化学療法、動注化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。通過障害(噴門部や幽門部)に対しての姑息的治療としては内視鏡、レントゲンを用いてステントの挿入を行っております。

粘膜下腫瘍に対しては超音波内視鏡、CTなどを併用し、正確な診断をこころがけています(穿刺細胞診が必要な場合は専門の施設を紹介しています)。
慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ陽性胃炎)について、2013年2月より保険適応での除菌治療が可能となりました。除菌治療を行うことで胃癌になるリスクを減らすことが可能となり積極的に除菌治療を行っております。保険適応となるのは2次除菌までですが、2次除菌も失敗に終わった方や抗生剤のアレルギー(特にペニシリン)のため除菌が行えない方のご相談もお受けしております

機能性ディスペプシアとは、内視鏡検査で病変がないのに胃もたれや胃の痛みが長期にわたって続く疾患で、治療に難渋する疾患です。最近、新たな治療薬も登場してきておりますのでご相談下さい。
アニサキスとは、寄生虫の仲間で多くは魚介類の内臓部分に寄生しています。半透明白色で体長2~3cmの細長い形をしています。ヒトには主にサバ、サケ、アジ、イカ、タラなどの魚介類から感染し、アニサキスがお腹の中で胃や腸に突き刺さることがあり(胃壁や腸壁を食い破ろうとする)、アニサキス症という激しい腹痛(特に食後数時間のうちに始まる激しい腹痛と嘔吐)を起こすことがあります。内視鏡検査で虫体が確認されれば鉗子で除去することで劇的に症状は改善されます。なるべく迅速に内視鏡検査を行う方針としておりますので、心当たりのある場合は食事をせずに受診して下さい。

炎症性腸疾患以外の小腸・大腸疾患

原因不明の消化管出血(OGIB)

上部消化管内視鏡及び大腸内視鏡で出血を認めない原因不明の消化管出血に対してカプセル内視鏡、バルーン小腸内視鏡による検査が可能です(現在のところ緊急例には対応しておりません)。バルーン小腸内視鏡(オリンパス社のシングルバルーン小腸内視鏡を導入しています)ではクローン病のような小腸粘膜に炎症を起こす疾患の生検診断(組織を採取して顕微鏡で診断する)が可能です。

大腸ポリープ、大腸腺腫、大腸癌、感染性腸炎、虚血性腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、イレウス(腸閉塞)、大腸憩室症(憩室炎、憩室出血)

大腸のポリープや早期癌に対しては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行っています。病変が大きくEMRで一括切除が困難な場合は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)での対応が可能です。大腸は粘膜が薄いためESDは技術的に難易度が高いのですが、当院消化器内科医師は全員この技術に精通しております。

血便など下部消化管出血が疑われる場合は上部消化管出血と同様に緊急内視鏡検査・治療を行える体制を整えております。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は近年増加しております。内科的寛解導入を目指し5-ASA製剤(アサコール、ペンタサ、サラゾピリン)、ステロイドを用いる標準療法を行いますが、困難な場合には血球成分除去療法(L-CAP / G-CAP)、免疫調整剤、生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)での治療を行うことが可能です。

肝疾患

ウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)、肝硬変、肝細胞癌(胆管細胞癌)、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、薬剤性肝障害、アルコール性肝障害、肝膿瘍

B型肝炎、C型肝炎とも最近の治療の進歩は目覚しく、B型肝炎では核酸アナログ製剤、C型肝炎ではインターフェロン(ペグ・インターフェロン)とリバビリン、プロテアーゼ阻害剤の併用を行いますが、病期やウイルスの遺伝子型や量、今までの治療歴や患者さんの年齢、肝疾患以外の病期の合併などを総合して患者さん毎に最適な治療法を選択する必要があります。

超音波(エコー)・CT・MRI検査により肝腫瘍の診断を行い、肝細胞癌の早期発見に努めています。治療は消化器外科や放射線科と連携の上、肝癌治療ガイドラインに沿って手術、経皮的局所治療(ラジオ波焼灼術(RFA)、エタノール注入療法(PEIT))、肝動脈塞栓術(TACE)、分子標的治療薬内服(ネクサバール)などから最適な治療法を選択します。肝動脈塞栓術については当センター消化器内科に入院の上で、血管内治療に熟練した放射線科専門医が治療にあたります。

お酒を飲まないのに脂肪肝、肝機能障害を健診などで指摘される方は多いかもしれません。以前はこのような脂肪肝は良性の疾患として放置されることもありましたが、近年の研究でそのような方の中に肝臓に炎症を伴い線維化が進行し肝硬変にまで進展する方が少なからずいることがわかってきました(非アルコール性脂肪性肝炎;NASH)。確定診断には肝生検が必要となりますので、一度外来を受診されることをお勧めします。

自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎は原因不明の肝機能障害としてご紹介をいただくことが多く、画像診断、組織診断を含め適切な診断、治療を行います。

アルコール性肝障害につきましても外来で経過観察・治療を行っておりますが、依存症の治療はアルコール専門クリニックでの診療をお願いしております。

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